百輭先生

用事のため家を出てしばらく歩いたところで、電車の中で読むための本を忘れたことに気がついた。「まあいいや。駅前のブックファーストで1冊買おう。」と思って何にしようか迷った末に、ふと思いついて内田百輭先生の本を買うことにした。

僕がこういう類の本を読むのは大抵内田樹先生の影響であり、今回もまたご多分に漏れず同様のケースである。百輭先生は漱石門下の一員であり、芥川龍之介や宮城道雄と親交があったそうだ。宮城道雄とのエピソードが本の中にもいくつか登場している。

僕が買ったのは「百鬼園随筆」(百鬼園は百輭先生の別号)という本であるが、この百輭先生、名前と顔の割に文章が大変ユーモラスである。電車の中で読みながら、笑い声を上げないようにするのが大変なのである。笑いがこらえられないのでどうしてもくすくすと小声で笑ってしまい、斜め前に座っていたおばさんから何度か怪しい人を見る目つきでちらちら見られた気配がした。

その後も何度か乗り換えるたびに似たような目つきで何人かの人ににらまれた。迷惑な文章である。また百輭先生の本を何か見つけたら、買って電車の中で読もうと思う。