もすきぃとぉぉ

お風呂の中で思い出した。1匹の蚊と4人の人間にまつわる話である。

今日卒検で教習車に乗り込んだとき、蚊を発見した。車には教習生3人と検定員1人が乗っており、検定員が運転手、僕は運転席の後ろに乗っていた。車内に蚊を発見したのは発車してすぐのことだ。とっさに掴まえようとしたけど逃してしまい、目で追っていた。その間検定員は検定に関する注意事項を述べていたため、無視して蚊を探すわけにもいかず、話半分、虫半分であった。

しばらく行ったところで、隣に乗っていた人も蚊に気がついた。蚊はそのまま我々の追跡を振り切り、フロントガラスの近くまで飛んで行った。そこで検定員も蚊の存在に気が付き、車外へ逃すために窓を開けた。しかし、その試みが無駄であることを僕は知っていた。なぜなら、その時蚊は検定員の耳にとまっていたからだ。「あっ」と思ったけど、説明を続けている検定員の話を遮るわけにもいかず、ましてや運転中の人間に「耳に蚊がとまっていますよ」とも言えず、僕はだまって見過すしかなかった。窓は閉められ、蚊はいまだに検定員の耳にとまっている。これは相当血を吸われているに違いない。それでも僕には為す術がなかったことは、ここまでの話で読者の皆様にはわかっていただけるだろう。誓って僕は無実である。

蚊が検定員の耳を離れたあと、僕は蚊の行方を見失ってしまった。車内を見渡すと、後部ガラスの付近にとまっている。僕からは距離が遠過ぎるため、シートベルトをしたままでは届かない。しかし、蚊はそこにとまったまま動こうとしなかった。どうやら存分に血を吸って満腹状態になったらしい。他の3人が襲われることはどうやらなさそうだ。検定員をスケープゴートにしてしまった。検定中は気が張っていたため、検定員が耳を掻いていたかどうかはわからなかったけど、多分後から相当痒くなったに違いない。誓って僕は無実である。