お掃除フランス組曲

部屋の掃除をした。バッハのフランス組曲を聞きながら。演奏はアンドラーシュ シフ。フランス組曲を聞くのも考えてみれば久し振りだ。バッハの鍵盤音楽はいいなぁ。バッハ自身も鍵盤のグレートプレイヤーだったらしいし。ドイツ代表バッハとフランス代表何某がオルガン対決(だったよね)をすることになったとき、バッハの演奏を立ち聞きした何某が夜逃げしたらしいからね。

ところで、掃除と音楽とにはよく考えてみると共通点がある。「秩序」だ。掃除は部屋の秩序を回復するために行うもので、音楽は音と音の間に秩序を形成させるものである。部屋の中に存在するもの、例えば本、テーブル、コップ、テレビ、電気スタンドなどは、それ一つだけを取り出してみるとただそれだけのものである。どこに置いてあっても本は本で、テーブルの上、ベッドの上、本棚の中、どこに置いても本という性質が変わるものではない。部屋とはそれらの家具や文房具、書物という本来何の関係もないものに関連を与えて位置関係を決め、一つの秩序を形成させるものであり、掃除は崩れかけたその秩序を元に戻すことである。音楽も、音一つ一つはそれだけでは何の意味もないただの音であるが、前の音と後ろの音との間に置かれ、他の音と同時に出されることで秩序を形成し、楽曲になる。どちらも人によって秩序を与えられるただの思い込みである。演奏は音と音との関連性を表現するものに他ならず、この関連性を無視するものはキーが正しくても演奏にはならない。パソコンの自動演奏や動物の鳴き声を繋ぎ合わせたもののように。というようなことに考え至った。思いついたわけではない。僕の創見ではないことは確かだから。