武道的料理論

料理は毎日のことであるから体に余計な負担のないよう、姿勢や道具の使い方を心掛けるのが良い。

まず立ち方。足を肩幅に開き、両の踵に均等に体重を預けるようにして楽な姿勢で立つ。ひざはぴんと伸ばすことなく、力を抜く。しゃがむときは足の筋力を使わず、ひざの力を抜くことで重力に任せてひざを折り曲げる。このとき足の裏が雲の上に立つような感じになるよう、床を踏みしめずに足裏を浮かせる。立ち上がるときはその逆を行う。左右を向くときは腰をひねらずに、左を向くときは右の踵、右を向くときは左の踵を中心にして体全体をひねらずに回転する。そのまま動き出すときは足で床を蹴らず、体を前傾して重力を利用し、進む。

次に包丁の使い方。包丁を使うときは腕の力を使わない。体全体を使って自分の体重で切るようにする。実際に働いているのは腕から先でも、その運動に体全体で協力するべし。力の加減が容易になる。硬い物を切るときは特に。腕の力だけで切ろうとすると勢いが余って怪我をする危険性がある。包丁を速く動かすときも腕を小刻みに動かすのではなく、体全体の動きを切っ先に伝えて切る。その方が目と手が連動して動くので、包丁の動きがよく見え、手元が狂わない。

その他の道具を使うときも基本は同じなり。腕の力は使わず、体全体の動きを体に伝えることで楽に作業すべし。今のところこれだけ。