北千住で秋を感じ、電車の中で映画を読む

東京3日目。本当はこの日に帰る予定だったけど、姉貴の勧めで下宿探しの下見をすることにした。実は前日の夜姉貴の旦那さんと夜中まで飲みながらおしゃべりしていたため、起きたのが朝10時。早起きして下見にでかける予定が初っ端から狂ってしまった。

読書の方は、「東京ファイティングキッズ」を読み終えて「映画の構造分析」を読み始めた。ラカン、バルト、フーコーフロイトなど難解なはずの彼等の述語を用いることで、映画がものの見事に分解、分析され、非常にわかりやすく解説されていく。難しいものと難しいものを混ぜ合わせたら、簡単なものと簡単なものになってでてきたかのような(明らかに気のせいなんだけど)、そんな感じの本だった。映画によってラカン等を解説し、解説されたラカン等を用いて当の映画を分析するといったようなアクロバットを見ているように感じる。電車の中でなかったら、きっと僕は手をたたき、膝を打ち、飛び上がって踊り出していたことだろう。

僕の行動と理性の崩壊をぎりぎりのところで止めてくれた電車でまず向かったのは、池袋である。地下鉄の丸の内線とJR山手線が通り、東京の主要な場所へのアクセスが確保される駅としてなかなか便利な場所であるが、住むには適していなさそうだ。ネットで検索してみた限りでは手頃な値段でそこそこの物件があるのだけど、実際行ってみると駅の側は電車や車の音がうるさく、住み良さそうなマンションは多分予算オーバーだ。しばらく歩いてみたけど、あまり好きにはなれそうにない。

次に行ったのは北千住。地下鉄日比谷線と千代田線が通り、東京中心部へのアクセスが確保されている。日比谷線に乗って駅の側までくると、地下ではなく地上を走り始めた。周りを見渡してみると、一面高層マンション。「なるほど、ここは住宅地なのね」と納得。電車を降りるとお腹が空いてきたので、アンデルセンでサンドイッチを買った。ハムとカマンベールチーズが挟んであってとても美味しそうなのにした。駅から外に出てみると、駅周辺はとても開けていて綺麗なところだった。一目で気に入ったので、ここもしばらく歩いてみることに。

駅から離れて、サンドイッチを食べるために座るところを探して、ようやく公園を見つけた。ブランコに腰掛けたのなんて何年振りだろう、と思いつつ、座ってサンドイッチを食べ、缶コーヒーを飲んだ。ふと空を見上げてみると、うろこ雲が出ている。ああ、秋だなって感じて、「秋来ぬと〜」の和歌を思い出した。ここは子供が多い。近くに学校があるらしい。住宅地だから当然か。ここなら住んでもいいな、と独り言をつぶやきながら、帰りの電車に乗った。

姉貴の家に帰ると、二人の甥と僕と姉貴で夕食である。食べ終わると下の甥は2階に上がって寝てしまい、上の甥と姉貴は居間で並んで寝てしまった。お疲れ様である。よく見るとこの二人、寝顔がそっくりである。上の甥は顔が全体的に父親似なので、寝顔が母親そっくりとは新発見であった。僕は「映画の構造分析」の最後の数ページを読んだ。本は面白く、北千住は良さ気な町で、僕はお酒を飲み過ぎた。

映画の構造分析
映画の構造分析
posted with amazlet on 07.10.04
内田 樹
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